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そしてすぐに日が暮れる

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スーパーのカーゴの下で一匹の虫が鳴いていた。虫の音に季節のうつろいを感じる。盆踊りの太鼓の音は遠くなり、秋祭りの篠笛の音がひびく。

だけどもまだ暑さは続く。その暑さの中で、ひんやりとする孤独を感じたかった。そんなときに手に取ったのがイタリアの作家の本だった。

サルヴァトーレ・クァジーモドの「そしてすぐに日が暮れる」という文庫本だ。クァジーモドは1902年にシチリア島で生まれ、政府の土木局の役人として働きながら活動を続けた。仕事をやめたあと創作に専念し、1968年に亡くなった彼は1959年にノーベル賞を受賞している。

彼の作品には土と水という、普遍的な存在が出てくる。どこにでもありふれたものを、人々がみな持っている言葉で表現する時に、書く人間は苦しさを味わう。クァジーモドの苦しさはある言葉に表れている。

人はみなひとりで地心の上に立っている太陽のひとすじの光に貫かれ、そしてすぐに日が暮れる

地心という言葉が出てくる。土地ではなくて、地心。自分の立っている場所が中心であると意識したときに、それを説明的な文章ではないもので言おうとしたときには悶えがある。土地とは、自分がいるところ。しかし、自分がここにいるということは土地という言葉だけでは表現できない。心はつねに中心にある。地と心を組み合わせることで、わたしがいまこの土地にいるということを散文的ではなく表現できる。

ひとの一生が三行で言い表されている。わたしの一生も、この三行なのかと思うと孤独を感じる。クァジーモドの作品は、世界が凝縮されたことによって色々なことが起こる人生がさながら一瞬のように感じられる。その一瞬に孤独を覚える。

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