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石ひとつ置くこと
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「天草ん者もんが必死で隠そうとしとるこつば、掘り返すな」
天草の身内に言われたこの言葉を、著者は島全体の空気として受け取ってきました。隠れキリシタンの島、出稼ぎ女の島と呼ばれてきた天草。そこで「恥」とされてきたものの多くは、実は中央の権力が押しつけた方向づけを、社会がそのまま受け入れてしまったものではないか。
タイトルの『石ひとつ置くこと』は、イタリア語の慣用句〈Metterci una pietra sopra〉から。「ものごとに区切りをつける」という意味で、日本語では「水に流す」とも訳されます。朽ちずに残る石と、流れて消える水。この距離が、著者の記憶をめぐる旅の出発点になりました。
十年の東京暮らしを経て天草に戻った著者が、置かれた石と、置かれなかった石のあいだを歩きながら綴った一冊です。
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